株式会社世田谷サービス公社様
  • 指導担当者スキルアップ研修
「氷山の下」が共通言語になった日

第三者の視点が現場の思考をリセットする。外部研修から生まれた「共通言語」が就労支援員同士の壁を溶かし、自立支援の質と職場のコミュニケーションを変えていった

第二事業部共働推進課の皆さま
左から田中浩伸様、課長 梅田亨様、就労指導員 三澤誠様

真面目な現場が抱えていた葛藤

-弊社へお声がけいただいた当時は、どのようなお困りごとを感じていらっしゃったのでしょうか。

田中様: 
当社は創立40周年を迎え、長年勤続している障害のある従業員も多く、中には20〜30年間働いているかたもいます。加齢による体力の衰えなどからできる仕事が限られてしまい、障害のある社員間でギクシャクしてしまうといった課題がありました。 

田中様:
また、当社の就労支援員(各就業場所で障害のある社員に指導する立場のかた)は非常に真面目で真摯に障害者と向き合っていますが、それゆえに困難なケースに直面した際、考えが行き詰まってしまうことがありました。表面的な事象だけでなく、その本質を探ろうとする姿勢や、解決力・判断力を高める必要を感じていました。 

梅田様: 
さらに、当社が管理するのは区の公共施設であり、区民の皆様の目があるため、障害者への配慮だけでなく、周囲への配慮も求められるという難しさがあります。働ければよい、から働き方のレベルアップが求められ、挨拶、身だしなみといった働く姿勢への要求も高くなっています。 

梅田様:
長年他の企業で働いてきた就労支援員も多く、個々に考えがあって、新しい支援のあり方やハラスメントへの配慮にギャップを感じるケースもありました。 

第二事業部共働推進課 課長 梅田亨様

田中様: 
社内でも就労指導員(就労支援員を指導する立場のかた)が現場を回ったりしていましたが、「身内」からのアドバイスであるがゆえに解決策を見出すことに限界を感じていたところでした。 

「身内の限界」を破った外部の視点

ー弊社にお声がけいただいた決め手は何だったのでしょうか。

田中様: 
さきほど述べたような限界を打破するために外部の研修を検討しました。区内の複数の支援機関に「どこか良い研修先はないか」と相談したところ、FVPの名前が挙がり、同業他社からの評判が非常に良かったことが大きなきっかけです。 

田中様:
実際にお話を伺ってみると、担当の方のヒアリングや提案が非常に丁寧でした。また、提供していただいた資料がわかりやすく、社内で説明する際にも「これならうまくいくのではないか」と上層部の承認を得やすい企画としてまとめることができた点も決め手となりました。 

第二事業部共働推進課 田中浩伸様

梅田様: 
FVPの研修を実施した最大のメリットは、社内研修特有の「前例踏襲」から脱却し、第三者の専門的な知識や視点を取り入れられたことです。福祉の現場では正解がわかりにくく、真面目な就労支援員ほど自問自答して煮詰まってしまいます。 

梅田様:
また、身内からの指導だと「今更言われなくてもわかっている」と反発を招くこともありました。しかし、外部の専門家から客観的な話を聞くことで、スタッフの思考が一度「リセット」され、新しい考え方を素直に受け入れることができるようになりました。これが外部研修を実施する大きな価値だと感じています。

「氷山」が共通言語になった

-弊社の研修をどのようにご評価いただけましたでしょうか?

田中様: 
まず、非常にわかりやすい研修内容で、私たちが障害者と向き合う際の「姿勢」を明確に示していただいた点を高く評価しています。また、講師が非常に知識豊富で、きめ細やかな視点で話してくれたことも、現場のスタッフにスッと受け入れられた要因だと感じています。 

田中様:
研修を実施して特に絶大な効果を感じているのが、「氷山」の例え話です。障害者の表面的な事象や行動はほんの一角に過ぎず、その深い部分には様々な要因が隠れているという話は、現場の就労支援員たちに深く響きました。

三澤様: 
この研修をきっかけに、現場の支援会議や日々の打ち合わせの中で「氷山の下には何があるんだろう」という言葉が、お互いの共通言語・共有フレーズとして頻繁に飛び交うようになりました。何か問題が起きた際に、このフレーズを一つのツールとして引用することで、会議の話がスムーズに本質へと向かうようになったのは大きな進歩です。 

三澤様:
実はこれまで、施設によっては就労支援員同士がそれぞれのやり方を持ち、お互いの支援方法にあまり介入し合わないという傾向が見られました。みんな自分のやり方が一番正しいと思って真剣に取り組んでいるからこそ、他者の意見を受け入れにくい部分があったのです。しかし研修後は、「情報共有」を目的とした現場の就労支援員会議や打ち合わせの回数が明らかに増加しました。 

第二事業部共働推進課 就労指導員 三澤誠様

田中様: 
日々の業務報告を見ていても、現場で頻繁に話し合いの場が持たれていることがわかります。 

三澤様: 
すぐに劇的な変化が起きるわけではありませんが、頭の片隅に研修の学びがあることで、スモールステップで少しずつ良い方向へ進んでいると実感しています。また、障害者への接し方においても、無意識の子ども扱いや不適切な言葉遣いが減ったという印象も受けています。 
 
田中様: 
さらに、具体的な行動の変化としてそれまでより「見やすい」手順書を作るようになったことが挙げられます。研修の中で、文字情報だけでは理解しにくいかたのために視覚的な工夫が必要だというお話がありました。皆知っていたことではありましたが、話を聞いたことで再確認したという感じです。各施設の現場就労支援員が自発的に、直感的にわかるような、写真やイラストを使った視覚的な手順書を工夫して作成するようになりました。中には非常に美しくクオリティの高い手順書を作ってくれるスタッフもおり、我々事務方としても、研修の成果が目に見える形で現れていることを大変嬉しく思っています。 

手順書の一例

全社で目指す「自立支援」と従業員満足度の向上

-今後の展望をお聞かせ願えますか

田中様: 
会社としての大きなキーワードは「自立」です。基本的には「自ら動けるような仕組みづくり」を第一に考え、障害者一人ひとりの能力や技量を鑑みて「個別支援計画」を作成し、個々の成長や課題克服に取り組んでいます。 現在は主力業務のほぼ100%が清掃ですが、作業能力が高いかたのためには、清掃にとどまらず喫茶や事務作業などへ職域(フィールド)を広げていきたいと考えています。 

田中様:
また、これまでは知的障害のあるかたが主力でしたが、精神障害のあるかたの受け皿も拡大していく方針です。そのために、週3〜4日勤務や1日4時間の短時間勤務など、働きやすい環境を整備し、受け皿を大きく広げる工夫をしています。 

梅田様: 
世田谷区内の支援学校や保護者のかたがたからも「世田谷サービス公社で働きたい」と安心して選んでいただけるような企業へと成長していく必要があります。今後も引き続き外部の研修などを積極的に活用しながら支援員の質向上を図り、従業員満足度の高い職場づくりを全社を挙げて目指していきます。 

さいごに

「氷山の下には何があるんだろう」—研修から生まれたこのひと言が、就労支援員同士の距離を縮め、会議の雰囲気を変え、手順書の作り方まで変えていきました。大きな変革ではなく、現場の人たちの見方が少しずつ広がっていくような、穏やかな変化です。 
障害のある従業員が「戦力」として働くのはもちろんのこと、「ともに働く仲間」として活躍できる職場づくりへ。そのヒントは、現場の真剣さをいったん外側から見つめ直すことの中にあるのかもしれません。 

職場づくりの一環として、現場のモチベーションを支える
ユニークな取り組みも生まれています。

スタッフのモチベーションを高める「エキスパート」表彰制度

主に清掃業務に従事する障害のある従業員のモチベーションをいかに高く保つかという課題から誕生しました。最初のきっかけは、「彼らにとっての働くモチベーションは『お金』だけではない」という気づきでした。利用者から「ありがとう」と声をかけられたり、胸に勲章のようなもの(表彰)があれば、彼らのプライドが高まり、誇らしく思えるのではないかという話し合いからアイデアが膨らんでいきました。 
 
現在では「挨拶」「報連相」「身だしなみ」「言葉遣い」の4部門で評価を行い、年に1回対象者を表彰する制度として定着しており、今年で4年目を迎える取り組みとなっています。 

研修を受けた就労支援員の皆さんのコメントを紹介します。
制度や仕組みだけでは見えてこない、現場の「気づき」がそこにあります。

  • 今、取り組んでいる仕事が、支援(指導)が必要なのか、特性・体調などへの配慮が必要なのかをきちんと見極めたいと思います。

  • そこに隠れている水面下の要因に着目することが大切だというお話があった。見えていない部分が影響すると打ち手が変わるので、観察し、たどってヒントを見つけられるようアプローチしていきたい。

  • その人の力を最大限に発揮できる環境を整え、一人ひとりに寄り添った支援方法を見つけていきたい。現場では行動を観察し、支援の課題か配慮の課題かを見極め、美化せず受け入れることにも気をつけて取り組んでいきます。

  • 就労支援員同士のコミュニケーション(十分な情報共有)をとり、取り組んでいきたいと思います。

  • 答えが1つでない仕事なのだと改めて感じました。一人ひとりの個性が発揮されつつも、全体で一致できる、観察力を重視した支援をしたいと思いました。

※音声読上ソフトでの正確性を鑑み、“障がい”でなく“障害”と表記しています。ご承知おきください。