人事採用担当者のための障害者採用に関する法律と助成金制度まとめ

この記事の内容

1. 導入 
2. 障害者助成金、支援制度 
3. 採用のハードルを下げるための障害者雇用助成金 
4. 雇い入れ時やスキルアップの人的負担や教育に関わる負担を軽減するための助成金 
5. 職場定着を円滑にするための障害者雇用助成金 
6. 職場環境の整備や通勤に対する障害者雇用助成金 
7. まとめ 

1. 導入

法律によって、一定の従業員数以上の規模の企業には障害者採用を行い、雇用する義務が定められています。 
 
障害者採用を行おうとしても、採用の仕方がわからない、人や設備等の設置、環境の整備などに負担がかかり、なかなか進められない…。そういった場合もあるのではないでしょうか。 
 
そのような問題を解決するため、様々な助成金制度があります。 
 
障害者採用にあたり、障害者雇用に関する助成金にはどのようなものがあるのかを知っていただき、障害者採用、雇用の促進につなげていただければと思います。 

2. 障害者助成金、支援制度

障害者雇用の助成金制度とは、企業にかかる一時的経済負担を軽減し、障害者の新規採用や雇用継続を目的とした制度です。 
 
企業が障害者採用を行い、雇用を維持するにあたって、人や設備を配置したり、環境の整備を行ったりするためにかかるコストがあります。 
 
コストが高じることによる事業主の負担を軽減することを目的にさまざまな障害者雇用の助成金が用意されています。 
 
障害者雇用の助成金制度にはたくさんの種類がありますが、今回は企業の利用用途別に、次のようにまとめました。 
 
・採用のハードルを下げるための障害者雇用助成金 
・雇い入れ時の人的負担や教育に関わる負担を軽減するための障害者雇用助成金 
・職場定着を円滑にするための障害者雇用助成金 
・職場環境の整備や通勤に対する障害者雇用助成金 

 
どんな助成金があり、どれを利用したらよいのか、障害者採用や雇用の参考にしてください。 

3. 採用のハードルを下げるための障害者雇用助成金

トライアル雇用制度は、経験や技術などが足りないことから就職が難しい求職者の早期就職や雇用機会の創出を目的に創設された制度です。 
週の所定労働時間が20時間以上の「障害者トライアルコース」と、10時間以上20時間未満の「障害者短時間トライアルコース」の2種類が用意されています。 

トライアル雇用助成金

①障害者トライアルコース

ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により、就職が困難な障害者を一定期間雇用することで受給できます。 
 
【対象労働者】 
次のAとBの両方に該当する障害者が対象となります。 
A:継続雇用する労働者としての雇入れを希望していて、障害者トライアル雇用制度を理解した上で、障害者トライアル雇用による雇入れについても希望している人 
B:障害者雇用促進法に規定する障害者のうち、次のア~エのいずれかに該当する人 
ア 紹介日において就労の経験のない職業に就くことを希望する人 
イ 紹介日前2年以内に、離職が2回以上または転職が2回以上ある人 
ウ 紹介日前において離職している期間が6か月を超えている人 
エ 重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者 
 
【受給額】 
対象者1人につき、 
精神障害者の場合:月額最大8万円を3か月、月額最大4万円を3か月(最長6か月間) 
それ以外の障害者の場合:月額最大4万円(最長3か月間) 
 
【問い合わせ先】 
管轄のハローワーク 

②障害者短時間トライアルコース

ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により、継続雇用を目的に、障害者を一定の期間を定めて試行的に雇用する際に受給できます。 
 
【対象労働者】 
継続雇用を希望していて、障害者短時間トライアル雇用制度を理解した上で、障害者短時間トライアル雇用による雇入れについても希望している精神障害者または発達障害者。 
 
【受給額】 
支給対象者1人につき、 
月額最大4万円(最長12か月間) 
 
【問い合わせ先】 
管轄のハローワーク 

4. 雇い入れ時の人的負担や教育に関わる負担を軽減するための助成金

特定求職者雇用開発助成金

障害者等を継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成される助成金で、次の2種類があります。 
①特定就職困難者コース 
②発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース 

①特定就職困難者コース

ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介によって、障害者を雇い入れた場合に活用することができる助成金です。 
 
【要件】 
雇用保険一般被保険者として雇い入れ、継続して雇用すること(対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ、当該雇用期間が継続して2年以上であること)が確実であると認められること 
※このほかにも、雇用関係助成金共通の要件などいくつかの支給要件がありますので、厚生労働省の「パンフレット」や「問い合わせ先」でご確認いただくことをお勧めします。 

【支給額】

(出典:厚生労働省ホームページ)
● 注;( )内:中小企業事業主以外に対する支給額および助成対象期間
● ※1「重度障害者等」:重度の身体・知的障害者、45歳以上の身体・知的障害者及び精神障害者
● ※2「短時間労働者」:一週間の所定労働時間が、20時間以上30時間未満である者

【トライアル雇用との併用について】 
トライアル雇用期間終了後も、継続して雇用する場合、特定求職者雇用開発助成金を受給することができます。 
併用して利用する場合は、トライアル雇用助成金と特定求職者雇用開発助成金、それぞれ申請を行ってください。 
なお、併用する場合、特定求職者雇用開発助成金の受給は、第2期支給対象期分からとなります。 
 
【問い合わせ先】 
管轄のハローワーク 

②発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース

ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により、障害者手帳を所持しない発達障害者や難治性疾患患者を雇用した場合に受け取ることができる助成金です。 
 
【要件】 
雇用保険一般被保険者として雇い入れ、継続して雇用すること(対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ、当該雇用期間が継続して2年以上であること)が確実であると認められること。 
※このほかにも、雇用関係助成金共通の要件などいくつかの支給要件がありますので、厚生労働省の「パンフレット」や「問い合わせ先」でご確認いただくことをお勧めします。 
 
【支給額】 

(出典:厚生労働省ホームページ)
※ 短時間労働者:1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者
※支給対象期ごとの支給額は、支給対象期において対象労働者が行った労働に対して支払った賃金額を上限とします。
※事業主が、対象障害者について最低賃金法第7条の最低賃金の減額の特例の許可を受けている場合は、支給対象期において対象障害者が行った労働に対して支払った賃金に次の助成率を乗じた額(表の支給対象期ごとの支給額を上限とします)となります。
【助成率】 中小企業1/3(中小企業以外1/4)

【問い合わせ先】 
管轄のハローワーク 

キャリアアップ助成金

障害者正社員化コース

障害のある有期雇用労働者を正規雇用労働者等に転換した事業主に対して助成されます。 
【要件】 
(1)キャリアアップ管理者(有期雇用労働者等のキャリアアップに取り組む人)を置いている事業主であること 
(2)対象労働者に対し、キャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主であること 
(3)該当するコースの措置に係る対象労働者に対する労働条件、勤務状況及び賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにすることができる事業主であること 
(4)キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主であること 
※申請にあたっての留意事項や、キャリアアップに関するガイドラインなど、詳しくは厚生労働省の「パンフレット」や「問い合わせ先」までご確認いただくことをお勧めします。 
 
【支給額】 

(出典:厚生労働省ホームページ)
※支給対象者1人あたり、上記の額が支給されます。

【問い合わせ先】
管轄のハローワーク

5. 職場定着を円滑にするための障害者雇用助成金

障害者介助等助成金

雇用する障害者の職場定着を図るために職場支援員を配置・委嘱したり、中途障害等による休職者の職場復帰のために必要な措置を講じた事業主を助成するものです。 
 
障害者介助等助成金には、以下の3種類があります。 
 
①職場介助者の配置または委嘱助成金 
②職場介助者の配置または委嘱の継続措置に係る助成金 
③手話通訳担当者の委嘱助成金 

①職場介助者の配置または委嘱助成金

【対象者】 
対象となる障害者は、以下3つの条件のいずれかに当てはまり、助成金の受給申請を行う事業主から雇用または継続雇用される従業員である必要があります。 
・2級以上の視覚障害者 
・「2級以上の両上肢機能障害」「2級以上の両下肢機能障害」の両方を持つ障害者 
・「3級以上の乳幼児期以前の非進行性の脳病変による上肢機能障害」「3級以上の乳幼児期以前の非進行性の脳病変による移動機能障害」の両方を持つ障害者 
 
【配置・委嘱職場介助者の要件】 
〈重度視覚障害者に対する介助業務〉 
・支給対象の従業員の都度の判断・指示に沿った事務処理に必要な文書の朗読・録音テープ作成 
・支給対象の従業員の都度の判断・指示に沿った文書作成と補助業務 
・支給対象の従業員が業務上の外出をする際の付き添い 
・上記3つの解除業務に付随する業務 
〈重度四肢機能障害者に対する介助業務〉 
・支給対象の従業員の都度の判断・指示に沿った文書作成と補助業務 
・支給対象の従業員の都度の判断・指示に沿った機械操作・PC入力・補助業務 
・支給対象の従業員が業務上の外出をする際の付き添い 
・上記3つの解除業務に付随する業務 
 
【受給額】 
要件を満たした介護者の配置または委嘱にかかった費用の3/4を受給することができます。 
上限は、介助者を配置した場合月額15万円、介助者を委嘱した場合は1回あたり1万円と定められています。 

②職場介助者の配置または委嘱の継続措置に係る助成金

障害を持った方の雇用を促進し継続して行うために、介助者の配置・委嘱を継続して実施した事業主が利用可能な助成金です。支給対象期間である10年間が終了した後も継続して介助者の配置または委嘱を行う必要があるので、利用の際は注意が必要です。 
 
【対象者】 
助成金の申請を行う事業主から雇用され、以下2つのうちいずれかの要件を満たす従業員である必要があります。 
・2級以上の視覚障害者 
・「2級以上の両上肢機能障害」「2級以上の両下肢機能障害」の両方を持つ障害者 
・「3級以上の乳幼児期以前の非進行性の脳病変による上肢機能障害」「3級以上の乳幼児期以前の非進行性の脳病変による移動機能障害」の両方を持つ障害者 
 
【配置・委嘱職場介助者の要件】 
〈重度視覚障害者に対する介助業務〉 
・支給対象の従業員の都度の判断・指示に沿った事務処理に必要な文書の朗読・録音テープ作成 
・支給対象の従業員の都度の判断・指示に沿った文書作成と補助業務 
・支給対象の従業員が業務上の外出をする際の付き添い 
・上記3つの解除業務に付随する業務 
〈重度四肢機能障害者に対する介助業務〉 
・支給対象の従業員の都度の判断・指示に沿った文書作成と補助業務 
・支給対象の従業員の都度の判断・指示に沿った機械操作・PC入力・補助業務 
・支給対象の従業員が業務上の外出をする際の付き添い 
・上記3つの解除業務に付随する業務 
 
【受給額】 
要件を満たした介護者の配置または委嘱にかかった費用の2/3を受給することができます。 
上限は、介助者を配置した場合月額13万円、介助者を委嘱した場合は1回あたり9,000万円と定められています。 

③手話通訳担当者の委嘱助成金

障害をもつ労働者の雇用促進・継続のために手話通訳担当者の委嘱を実施した事業主が利用できる助成金です。 
 
【対象者】 
助成金を申請する事業主によって雇用され、以下2つの条件いずれかに当てはまる従業員である必要があります。 
・3級の聴覚障害者 
・2級の聴覚障害者 
 
【委嘱の手話通訳担当者の要件】 
要件を満たす受給対象障害者がスムーズに業務を遂行できるように、以下3つの業務のうちいずれかを行う手話通訳担当者である必要があります。 
・支給対象の従業員が業務上で必要な手話通訳業務 
・支給対象の従業員の能力向上を目的とした研修等に必要な手話通訳業務 
・支給対象の従業員が所属している事業所で働く他の従業員に対し行う手話研修業務 
 
【受給額】 
要件を満たした介護者の配置または委嘱にかかった費用の3/4を受給することができます。 
上限は、手話通訳者の委嘱1回につき6,000円です。 
 
【問い合わせ先】  
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 都道府県支部 

職場適応援助者助成金

職場適応に特に課題を抱える障害者に対して、訪問型・企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチとも呼ばれます)による支援を実施した事業主に対して行われる助成です。

①訪問型職場適応援助者助成金

企業に雇用される障害者に対して、訪問型職場適応援助者による支援を提供する法人に助成されます。 

【支給対象となる障害者】 
身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者、難病患者、高次脳機能障害のある人、地域障害者職業センターが作成する職業リハビリテーション計画で、訪問型職場適応援助者による支援が必要と認められる人 
 
【支給対象となる措置】 
地域障害者職業センターが作成または承認する支援計画で必要と認められた訪問型職場適応援助者による支援 
 
【対象となる支援内容】 
支援計画に記載された対象障害者の職場適応を図るための①~⑧の支援 
①支援計画書の策定 ②支援総合記録票の策定 ③支援対象労働者に対する支援 ④支援対象事業主に対する支援 ⑤家族に対する支援 ⑥精神障害者の状況確認 ⑦地域センターが開催するケース会議への出席 ⑧その他必要と認める支援 
 
【助成額】 
①と②の合計 
①支援計画に基づいて支援を行った日数に、日額単価をかけて算出された額 
・1日の支援時間(移動時間を含む)の合計が4時間以上の日 16,000円 
(精神障害者への支援を行った場合は3時間以上の日) 16,000円) 
・1日の支援時間(移動時間を含む)の合計が4時間未満の日 8,000円 
(精神障害者への支援を行った場合は3時間未満の日) 8,000円) 
②訪問型職場適応援助者養成研修に関する受講料を事業主がすべて負担し、かつ、養成研修の終了後6か月以内に、初めての支援を実施した場合に、その受講料の1/2の額 
 
【支給期間】 
最長1年8ヶ月(対象障害者が精神障害者の場合は最長2年8ヶ月) 

②企業在籍型職場適応援助者助成金

障害者の雇用に伴い必要となる援助を行う企業在籍型職場適応援助者を置く事業主に対して助成されます。 

【支給対象となる障害者】 
身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者、難病患者、高次脳機能障害のある人、地域障害者職業センターが作成する職業リハビリテーション計画で、企業在籍型職場適応援助者による支援が必要と認められる人 
 
【支給対象となる措置】 
地域障害者職業センターが作成または承認する支援計画で必要と認められた企業在籍型職場適応援助者による支援 
 
【支給対象となる支援内容】 
支援計画に記載された対象障害者の職場適応を図るための①~④の支援 
①支援対象障害者と家族に対する支援 
②事業所内の職場適応体制の確立に向けた調整 
③関係機関との調整 
④その他(地域障害者職業センターが必要と認めて支援計画に含めた支援) 
 
【助成額】 
①と②の合計 
①「支給額」に示す対象障害者1人あたりの月額に、支援計画に基づく支援が実施された月数を掛けた額 

(出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 動画「障害者雇用助成金の申請について」)

②企業在籍型職場適応援助者養成研修に関する受講料を事業主がすべて負担し、かつ、養成研修の修了後6か月以内に、初めての支援を実施した場合に、その受講料の1/2の額
 
【支給期間】 
一人の企業在籍型職場適応援助者において、雇用保険適用事業所ごと1回限り、支援対象障害者1人に対する職場適応援助者1回につき、最長6か月 
 
【問い合わせ先】 
地域障害者職業センター 

6. 職場環境の環境整備や通勤に対する障害者雇用助成金

障害者作業施設設置助成金

障害者の作業環境配慮のため施設を整備したり、設備を設置する場合に費用の一部を助成するものです。 
工事、購入等による設置・整備に対する「第1種作業施設設置等助成金」と、賃借による設置に対する「第2種作業施設設置等助成金」の2種類があります。 
 
【支給対象となる障害者】 
身体障害者、知的障害者、精神障害者 
※在宅勤務の場合も対象となります。 
※雇用されてから6か月を超えている場合には対象とならないことに注意が必要です。 
 
【支給対象となる措置】 
障害者の障害特性による就労上の課題を克服・軽減するための作業施設等(作業施設、付帯施設作業設備)の設置・整備 
 
【助成額】 
作業施設等の設置・整備に要する対象部分の費用×2/3(助成率) 
※第1種、第2種それぞれに限度額が設定されています。詳しくは、問い合わせ先にて確認してください。 
 
【支給期間】 
3年間(第2種作業施設設置等助成金) 
※支給後の再度の認定申請は可能です。 

重度障害者等通勤対策助成金

障害者の通勤を容易にするための措置を行う場合に、その費用の一部を助成するものです。次の8種類があります。 
・重度障害者等要住宅の賃借助成金 
・駐車場の賃借助成金 
・指導員の配置助成金 
・通勤用自動車の購入助成金 
・住宅手当の支払助成金 
・通勤用バスの購入助成金 
・通勤援助者の委嘱助成金 
・通勤用バス運転従事者の委嘱助成金 
 
 
【問い合わせ先】 
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 都道府県支部 

7. まとめ

企業の障害者採用や雇用維持を促進するため、様々な助成金があります。 
支給対象となる障害者、支給対象となる措置、助成額や支給期間などは、それぞれの助成金により異なります。 
 
上手に利用して、障害者採用、雇用を進めていきましょう。 

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